2022.03.04
免疫性血小板減少症は、血小板に対する自己抗体ができて血小板が破壊される自己免疫疾患です。
抗体ができる原因は不明ですが、小児では、免疫性血小板減少症はしばしばウイルス感染がトリガーとなって発生します。
骨髄では血小板をどんどん生産して破壊された分を補おうとしますが、必要量に追いつくことができません。
血小板を破壊している抗体が骨髄も攻撃して血小板の生産を低下させることがあります。1~7歳に発症が多いです。
血小板数低下の最初の徴候は、皮膚の内出血です。
しばしば下腿の皮膚に小さな赤い斑点(点状出血)が多数現れ、ちょっとした打ち身で黒っぽい青あざ(斑状出血または紫斑)が広がることがあります。
歯ぐきから出血する場合や、便や尿に血液が認められる場合があります。月経の出血や鼻出血が多量になることもあります。また、出血が止まりにくくなります。
血小板の減少が進むと、こうした出血傾向が悪化します。
血小板数が非常に少なくなると、消化管から多量の血液が失われたり、外傷がなくても生命を脅かす脳内出血を起こしたりします
小児の症例の半数以上は診断時に血小板数が1万/μL未満とかなり減少しており、あざ、鼻出血、皮下の点状出血斑、歯肉出血で気づかれます。
希ではありますが0.5~1.5%の症例で頭蓋内出血が起こり、時に致命的となり、とても怖いです。
なので、血小板数が1万/μL未満の患者さまは、クリニックから入院先の病院に搬送する際には頭部打撲に気をつけるなど、かなり注意を要します。
血小板減少をきたす他の血液疾患との鑑別のため、骨髄検査が行われます。
第一選択薬は副腎皮質ステロイド(2mg/kg)、あるいはガンマグロブリン(IVIG)(1~2g/kg)です。
副腎皮質ステロイドは網内系で血小板が貪食されることと、血小板自己抗体の産生を抑制する効果があります。
約8割の症例で、治療開始より数日~数週間で血小板数の増加が認められます。
治療の目標は、必ずしも血小板数を正常にもどすことにあるのではなく危険な出血を防ぐことにあり、血小板数を3万/μL以上に維持するのに必要な最小限の薬剤量の使用に留めるべきであるとされています。
ただし、手術や外傷などの出血時には血小板数を安全な値まで(たとえば血小板数5万/μL以上)増加させる必要があります。