2022.03.04
赤血球の中にあるヘモグロビンは鉄を含んでいます。ヘモグロビンは鉄イオンを利用して酸素と結合し、肺から取り込まれた酸素を体の各組織、各臓器へと運んでいます。
体内の鉄が不足するとヘモグロビンが生成されなくなり、その結果、起こる貧血が鉄欠乏性貧血です。
乳児期後期の母乳栄養児、思春期の女子に特に多く認められます。
前者に多い理由として、生後9か月頃からは離乳食の量と1日の回数が増え、それに伴い母乳を飲む量は減少します。
しかし、この時期はまだ鉄分の多い離乳食をそれほどたくさん食べることができず、母乳には鉄は含まれていますが、母乳を飲む量自体が減少すると乳児が摂取する鉄分も減少することになり、乳児の体内では鉄が不足しやすい状態になるからです。
後者に多い理由は、月経が始まるからです。
鉄欠乏性貧血は徐々に進行してゆくため、病初期には症状が現れにくいです。
ヘモグロビンの値が8g/dL未満になると易疲労感、顔色不良、息切れなどが認められます。
心雑音(収縮期)が聴取される症例もあります。
5歳以下の乳幼児の鉄欠乏性貧血はHb<11.0g/dL、ヘマトクリット(Hct)<32%、平均赤血球容積(MCV)<70fLで診断できます。
血清鉄、貯蔵鉄(フェリチン)の低下が認められます。
鉄分を多く含む赤み魚、レバーなどを積極的に摂取することは指導する価値はありますが、食餌療法だけでは改善の程度は乏しいです。
その場合は、鉄剤の内服を行います。3~4ヶ月間の投与が必要です。